セクゾおぼえがき

CDの感想を中心に

映画「ハルチカ」ネタバレ感想

 

 

 

ハルチカのネタバレしかありませんので、鑑賞まだの方は見てはダメです!


この映画のテーマ、正直好きです。

いかにも邦画監督みあるシュールなシーンには「んんんん???」ってなったし、他にも突っ込みどころあるんだけど、でもこの映画がぶつけてくる超真っ直ぐなメッセージがなんか妙に気に入ってしまって、もうそれで好きだなと思いました。

ハルチカは、全体が一つのテーマでできていると思います。前半の仲間集めが第一楽章で、後半のコンクール挑戦が第二楽章。スポットライトが当たる演奏者が違うけど、そのメロディは一緒。
「(もしあなたが音楽を好きなら、)大丈夫、一緒にやろう!」
この作品には、誰かに手を差し伸べるという姿勢が一貫してます。

この物語には、本当は音楽が好きなのに、様々な理由で出来なくなった(出来なくなるかもしれない)人がたくさん出てきます。タラコ唇をからかわれるのが嫌になった米沢さん。野球部のエースだったプライドが邪魔をする宮本先輩。難聴を抱える芹沢さん。老人たちの世話で学校に行けなくなったカイユ。勉学への専念を求められてるハルタ、など。


チカちゃんはその一人一人に、太陽みたいな明るさで『大丈夫、一緒にやろう!』と手を差し伸べます。例えば米沢さんを説得するシーンでは、タラコ唇をからかわれるかもというコンプレックスや不安を、みんなで一緒に引き受けようとします。米沢さんも心の奥底では音楽をやりたかったろうから、そう言ってもらえて嬉しかったと思います。


どうしてチカちゃんが周囲に手を差し伸べるのか、その最初のきっかけが「音楽」っていうのもじんわりきます。バレーで挫折して、自分にはもう何にもないと思っていたチカちゃんに、音楽がそっと手を差し伸べてくれた。公式でよく言われてる音楽も主役っていうのはほんとにその通りだなぁと。

そしてこの映画は、大事なところでは必ず、その『一緒にやろう』を言葉ではなく、音楽だけで表現してくるのが憎い!

例えばカイユに向かって「上を向いて歩こう」を演奏するシーン(ここはほんと何度見てもグッとくる)。カイユはこの曲をコンクールで演奏する直前に、おじいさんが倒れて学校に来られなくなってしまいました。ベランダの向こうには、演奏できなかったその曲を『一緒にやろう』と一生懸命演奏している仲間たちがいる。思わず指でパーカッションのリズムを叩いてしまうカイユ。本当は音楽をやりたかったカイユの気持ちが溢れ出ていて、未熟だけど一生懸命な演奏もすごく良くて、めちゃくちゃジーンとくるシーンでした(清水くん味がありますよね)

そしてもちろん一番大事なのがラストの演奏シーンで、大事な場面でミスして、申し訳なさのあまり部活に行けなくなってしまったチカちゃんに、今度はハルタを含めみんなが、「チカちゃん大丈夫、一緒にやろう。」と音楽で呼びかけます。かつてチカに手を差し伸べられた仲間たちが、今度はチカに対して手を差し伸べてくれます。(吹奏楽部には入らなかった芹沢さんも。)

草壁先生が保健室でハルタに告げた『目線をあげれば仲間がいる。一人で抱え込まなくていいんだよ』という言葉。その言葉はハルタだけでなく、作品全体に向けられています。夜にたった一人で補聴器を探していた芹沢さんや、『帰れるわけないだろ!』と仲間を怒鳴りつけて海を見つめていたカイユ。どうにもならない試練を一人で抱え込んでいたキャラクターたちすべての孤独に、草壁先生の言葉は向けられています。

合奏は相手の音を聞き、受け入れることで始まる。でも人数がいるから合わせるのは逆に難しくて、相手の欠点ばかり指摘すると、今度は長回しのシーンみたいに一気に逆に不協和音になってしまう。
誰かに手を差し伸べることでそこに絆が生まれて、ハーモニーが生まれる。そこで出来た仲間は、自分が何かにつまづいた時はきっとそばにいてくれる。

この映画は、青春真っ只中な学生の助けにもなると思うし、部活の仲間みたいな感覚を久しく忘れてた大人にも、ハッと懐かしい価値観を思い出させてくれる作品になっていると思います。しかもそれを押しつけがましくなく、音楽によってじんわりと感じ取れる作りになってる。意外と有りそうでなかった青春映画でした。

ハルタの成長物語でもあって、今度は自分がチカちゃんを支えたいとだんだんと男らしく頼もしくなっていくハルタにキュンときます。屋上でチカちゃんに向かってホルンを吹く勝利くんの表情がめっっっっちゃくちゃカッコいい。

ここで書いた以外にも、一つ一つの台詞がほとんど作品内で伏線回収されていて、2回目以降の方がストンと納得できる映画だと思いました。(最後のカオスっぷりも、チカちゃんが序盤に明かす理想が具現化したものだと思うとなんか微笑ましい)


まあ結論を言うと、ハルチカ、なんか文科省とかの推薦映画にしてもいいくらいの真っ直ぐさだよ!!!!!

 
勝利くんのハルタの感想はまた書くとして、とりあえず内容の感想でしたw